奥多摩の山なみの稜線が薄暗くシルエットを描いて暮れ、そのすそ野では、まだほの白い残照が農家の庭先に咲く秋の七草を淡く照らしています。
時雨(しぐれ)は短い時間で降りやみ、一瞬にして太陽が照ってきらきらと輝きます。川面はもやがかかり、河原に咲く秋の草花は露にぬれ、多摩の秋野の風情が浮かびあがります。
これらの情景は、江戸時代の琳派系画家、酒井抱一の「夏秋草図屏風」の世界を思い起こさせます。